独白集

今は主にエッセイを書いています。

2024-01-01から1年間の記事一覧

「ルックバック」藤野の背中を押したもの

この頃あまりにも映画を観ていないことに気づいて、1時間以内で鑑賞できるということで「ルックバック」を観た。原作は「チェンソーマン」の藤本タツキ先生で、話題になっていた頃にスマホでささっと読んで、解釈に頭を悩ませてそっと画面を閉じた記憶だけが…

見返りについて

いつの間にか、見返りを求めるようになっていた。私は、こんなに悩んで、苦しんで、あなたに尽くしたのに、どうしてあなたはそれに応えてくれないのか。そう感じることが増えた。だけど、私の行為は、例えば「出産した人にはお祝いを贈る」だとか、「旅行に…

死と幸福についての独り言

家の近くで他人が死んだ。避けようがない事故だった。テレビに映った風景を見て、私は幼い息子に「ねえ、うちの近くが映っているよ」と言おうとして口をつぐんだ。家の近くで他人が死んだという事実を、幼な子にうまく伝えられる自信がなかった。 息子は最近…

永遠のさよならの前に

その瞬間はあっという間 過ぎ去って行くのを知っていながら 何もできずにいたんだ 「それは永遠」 GRAPEVINE 温かな空気がほのかに残る夕暮れ時、仕事を終えた帰り道、泣きたい気分でGRAPEVINEを聴いていた。保育園の花壇にはチューリップやパンジーが咲き誇…

他者は幻

子どもの頃、私はよくこんな空想をした。友人や家族、道ですれ違う人たち、すべては幻である、と。 他者が存在していると信じ切ることができなかった。未だに確信を持てずにいる。だって、証拠なんてどこにもない。 自分が存在していることは、なんとなく信…

野良猫のように生きるということ

永遠に零れ落ちる砂を眺め続けているような、虚しい気持ちから逃れられないまま、書きかけの小説を何度も何度も推敲した。2万字の世界を支配するための器量が足りず、ストーリーは矛盾をはらみ、登場人物は余計なことを喋り、哲学的な言い回しは悪臭を放っ…