独白集

今は主にエッセイを書いています。

何にもできない君が好き

2015年6月1日

 

 「私を認めてほしい」という気持ちと、「私を愛してほしい」という気持ちとの違いについてよく考える。

 

 前者は他人より優れていること――美しいこと、能力の高いこと、善い人間であること――の証明を欲する感情で、彼らの頭の中には1本の直線が上へとのびていて、自分をその高みに位置付けてくれる他者を求めている。

 後者は「私」という存在をありのままに、無条件に肯定してほしいと願う欲望で、それを完全に満たすためには多分、「好き」に明確な理由があってはいけない。だって理由は「条件」と読み替えることもできるから。

 

 美人だから好き、頼れるから好き、才能があるから好き――条件つきの「好き」は自分以外の誰かに向けられる可能性をはらんでいる。条件が満たされなくなれば、愛情も途絶えてしまう。

 

 何にもできないきみが好き、輝いても転んでも、変わってしまっても、永遠に好き。

 

 完全に愛されたい人間が求めるのはそんな言葉で、だけどひたすらに高みを目指す人間にとって、その言葉は少し甘すぎて、信じることができないのかも知れない。