独白集

今は主にエッセイを書いています。

腐った日記帳

2015年5月15日

「考え事を言葉にしていると、ときどき自分が酷く冷たく歪んだ人間に思えてくる。

 愛し愛される恋人同士の閉じた世界や、賑やかで満ち足りた大家族の食卓、やさしさと助け合いにあふれた小さな集団。
 それらが遠い遠いところにあるような気がしてしまう。
 遠ざけているのか、手が届かないから否定しているのか、それは分からない。

 平和で理想的な関係の中に埋没する自分に対して、違和感を抱く。かといって、勢力争いや陰口、虐めやからかいや排除、そういうものが日常的に行われる集団に対しても嫌悪感がある。

 人はどうして群れるのだろうと思う。傷ついてまで。自分を偽ってまで。

 他人と悪戯に時を過ごすとき、人は何を求めているのだろう。相手の弱みを探し、優位に立とうとする人。自尊心を傷つけられないように防衛的になる人。ひたすら相手を肯定し同調する人。冗談ばかり飛ばしてやり過ごす人。

 建前を嫌い真実を、裏側を見たいと思ってしまうのは何故だろう。

『ほら人間はこんなに汚いじゃないか、みんな嘘つきじゃないか』

 私は結局、そう言いたいだけなのだろうか――

                     20○○.5.23」


 こうして他者の視線に決して晒されない空間に文字を連ねていると、汚い自分とふたりきりで対話しているような閉塞感でいっぱいになる。そして文章が腐る。

 記憶は言葉となり降り積もり、失われる。そこには何も書かれていない。私にとって真実であったものは、言葉にした途端腐ってしまう。